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所有している、マニアックなレンズ群をテーマ毎 に分けて解説を行う長期シリーズ記事である。 今回からは、2回の前後編の短期シリーズとして、 「非球面(レンズ)と異常低分散(ガラスレンズ)」 編とする。 現代の写真用高性能交換レンズでは、それらの 「非球面レンズ」や「異常低分散ガラスレンズ」 (注:他にも”特殊低分散”等の別の呼び方もある) ・・を搭載している事は、もはや常識的だ。 近年(主に「2016年断層」以降)の高性能レンズでは その両者の「特殊硝材」を複数使っているものも多い。 が、本短期シリーズでは、そのような最新レンズを 紹介するのではなく、むしろ、少し前の銀塩時代 (最も古いもので1980年代頃)から、現代にかけて、 そうした「特殊硝材」を、比較的早い時代から 採用していた(つまり、当時としては先進的な) レンズを、だいたいだが、歴史(時間軸)に沿って 紹介していく。 今回の前後編では、 前編=非球面レンズのみの使用(1本の例外あり) 後編=異常低分散ガラスレンズのみの使用 のように分けて、各々の記事で9本のレンズ (注1:稀にコンパクト・デジタルカメラを含む) (注2:参考用の作例のみ追加する場合がある) の歴史を紹介して行く事にする。 よって、今回は「非球面」編となる。 話の流れとしては、非球面レンズが、写真用の 交換レンズの中で、どのように発展していったのか? 非球面レンズの製造過程や、その得失等の技術的な 説明を含めながら、歴史を辿る形となる。 --- では、「非球面」編、まず最初のレンズ。 レンズは、CANON New FD 50mm/F1.2 L (中古購入価格 55,000円)(以下、NFD50/1.2L) カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機) 1980年発売のCANON FDマウント用大口径MF標準レンズ。 この当時、一般的であった大口径標準レンズの 光学系は、F1.4級で6群7枚の変形ダブルガウス型 構成であるが、本レンズは開放F値をF1.2とする為、 1枚の非球面レンズを追加した6群8枚構成である。 「そうした追加変更だけで写りが良くなるのか? 非球面とは、そんなに凄いレンズなのか?」 ・・と、そういう疑問が起こるだろう。 そう、そういう様々な非球面レンズに関する疑問点を 検証/説明していくのが、今回の記事のテーマである。 本レンズNFD50/1.2Lは、発売当時での同社製の他の 標準レンズよりも、数倍(3倍から5倍)も高価であった。 これだけ価格差があると、消費者層としては、「よほど 凄いレンズなのか?」と期待するとともに、そうした 「プレミアムなモノ」を欲しがる、一部の消費者層には 価格の高さが、逆に心理的な購入動機に繋がっていく。 多少無理をして、これを入手するのは、写りそのもの よりも、満足感や優越感という心理的要因が大きいだろう。 買った後は、周囲の人達に対して 「このレンズは非球面が入っているから凄いのだ。 オマエは非球面を知っているか? え、知らない? キヤノンの最新技術だぞ、写りも、もの凄いぞ!」 ・・等と、自慢をする事ができる訳だ。 最初に言っておくが、非球面を1枚入れただけで、 そんなに劇的に描写力が向上する訳では無い。 本レンズの時代では、6群7枚の変形ダブルガウス型 では、開放F1.4迄は、なんとか作れたのだが、これを 開放F1.2迄明るくしようとすると、とたんに諸収差の 発生が抑えきれなくなり、ボケボケの「甘い」写りに なってしまう。 (参考関連記事:旧ブログ *最強50mm選手権第7回「MF50mm/F1.2級」編) 本レンズでは、球面収差等の発生を抑える為、 F1.2級大口径標準レンズに、非球面を1枚追加した 設計としている。元の状態(F1.2での通常構成)の 性能が悪すぎるため、この設計で、なんとかF1.4級 標準レンズ並みの描写力を確保している次第だ。 で、あれば「開放F1.4がF1.2に変わっただけで、 値段が2~3倍にも跳ね上がるのか?」という疑問の 方が、むしろ大きいのではなかろうか? それが本来のコスパ感覚だ。 でも、前述のように「非球面を入れた、開放F1.2の、 高価で凄い標準レンズ」を入手する事自体が、 ステータス(自慢のタネ)であったり、所有満足感に 繋がる事を「是」とするユーザー層も、世の中には 多いのだから、そのあたりの価値観は個人に依存する。 その為に、高価であっても、こうしたレンズを作って 売る訳だ。万が一買ってくれたならば、CANON側も 流通側も、儲けが大きくて嬉しい訳だ。 (参考:この手の商品やサービスを、近代では 「プレミアムな商品」と呼ぶ。 ただし、私は、このNFD50/1.2Lで「懲りて」 しまっているので、その後はあくまで「コスパ」 を最優先とする価値観となっているし、その為 近代での「プレミアム」系の商品も好まない) (参考:↓写真は、本NFD50/1.2Lを、同時代の 銀塩機CANON New F-1に装着し、フィルムを入れて 撮影したケース。なお、銀塩写真である事を明確に する為、スキャン後の後編集で、フィルムの送り穴 (パーフォーレーション)の枠を追加している) で、値段が高くなったのは、非球面レンズは、当時と しては非常に高額な部材(部品)であったからだ。 これは後年には、製造技術の進歩により、もっと安価 になっていくし、さらには、設計技術の進歩もある。 非球面の製造技術の進歩については、詳しくは後述する。 設計の進歩とは、つまり、本レンズの時代では、 「通常の標準レンズに、1枚の非球面を追加しました」 という設計手法であったが、近代のレンズでは、最初から 非球面レンズ(や異常低分散ガラスレンズ)を複数枚 使用する事を前提に、コンピューターによる光学設計が 行われる。こうした複雑な設計は、人間の手では困難で あり、PCやソフトウェアの進歩を待たなくてはならなかった 次第だ。 で、現代の高性能レンズでは、非球面レンズや異常低分散 といった特殊硝材の使用は、もう「常識」である。 昔のレンズでは、非球面レンズを使用している事を 誇らしげに、AL、ASPH、等の略語で、それがレンズ型番に 入っていたが、近代のものでは「もはや当たり前」という 観点から、わざわざ非球面等を搭載している事を、型番 や名称等で謳う事は、だいぶ少なくなった。 だが、そういう名称が入っていないから、一部の良く わかっていない消費者層等では、昔の時代のレンズで その時代の新技術(例:CANONで言えば、非球面、蛍石 レンズ、S.S.C.コーティング等)の名称が入っている ものを、「それは凄いものだ」と必死に探してしまう。 また、販売側でも「珍しい名称が入っているから」 という、ただそれだけの理由で、高価な値付けにしたり、 酷い場合では、「投機対象」となって、超高額相場での 取引が始まってしまう。 でも、どうみてもそれはおかしい。何故、わざわざ古い 時代での当時の新技術の搭載を、現代で、もはやそれが 常識になっている時代において、ありがたがるのだろう? <非球面レンズの初出> もっとも、このような、変形ダブルガウス型+ 非球面1枚という構成は、本レンズが初ではなく、 CANONでは1971年のFD 55mm/F1.2 AL NIKONでは1977年のAi Noct-NIKKOR 58mm/F1.2 の前例がある。(いずれも未所有) なお、さらに古い非球面レンズの使用例としては、 LEICAでの1966年のNoctilux 50mm/F1.2や、 NIKONでの1968年のOP Fisheye-NIKKOR 10mm/F5.6 が存在した、との事だが、いずれも超レアなレンズに つき、見た事も無い。 こちらは、かなり特殊なレンズだとも言えよう。 一般層に向けて発売された、上記CANONとNIKONの 大口径標準レンズは、非常に高価であった。 発売時価格は、以下の通り。 145,000円:FD 55mm/F1.2 AL 150,000円:Ai Noct-NIKKOR 58mm/F1.2 1971年は、現代の3分の1~4分の1程度の物価水準 だとすれば、これらは現代の約50万円前後に相当する 非常に高価なレンズであった、なかなか買える人達も 多くは無かったであろう。 もっとも、市場縮退した現代においても、50万円前後 の高額レンズは、Carl Zeiss Otus 100mm/F1.4や、 CANON RF 85mm/F1.2 L USM DS等が存在しているので いつの時代でも「高額なレンズ」というものはある。 本NFD50/1.2Lも、発売時には9万円という、やや高額 な値付けであった、当然ながら、あまり生産・販売数量 は多く無いと思われ、現代においては希少価値からか? プレミアム相場(→投機対象商品であり、不条理に高価) となってしまっている。 前述のように、「通常の標準レンズに、1枚の非球面を 追加しました」という設計コンセプトのレンズであるから 高価な価格で入手するべきレンズでも無いであろう。 --- さて、次の「非球面」搭載レンズ。 レンズは、GIZMON Utulens 32mm/F16 (新品購入価格 5,000円 マウントアダプター付き) カメラは、FUJIFILM X-E1 (APS-C機) 2017年発売の、固定焦点型トイレンズ。 銀塩レンズ付きフィルム「写ルンです」(FUJIFILM製 1986年~現行製品)の搭載レンズを再利用した製品 であり、機種名の「Utulens」(うつれんず)は、それを 由来としている。 <プラスチック非球面レンズ> 「写ルンです」の搭載レンズは、1枚構成(単玉)の メニスカス(=「三日月形」という意味で、片面が 凸、片面が凹となっている)型で、しかも非球面形状 である。一般には「メニスカス型1群2枚単玉非球面」 等と呼ばれる。 これはプラスチック成型(正確には「レジン」という材料) であり、非球面形状の金型に、熱したプラスチックスを 流し込み、冷やして固める事でレンズが出来るので、 大量生産で、安価に非球面レンズを製造する事ができる。 (参考:ガラスの代用としてプラスチックを使っている 事を公に言いたく無い場合、業界内等では「P」または 「Pレンズ」という略称で、これを称する場合もある) 他の非球面レンズの製造手法については、追々説明する。 <Utulensについて> メニスカス型非球面では、まあ、球面収差を低減する 事はできるであろう。 ちなみに「球面収差とは何か?」と言えば、通常の 形状のレンズ、つまり球面レンズにおいては、入射した 光が1点に集まらない現象が発生してしまう。 下図は、その模式図(光学シミュレーターによる)だ。 だが、収差というものは、「球面収差」に限らず、他の 種類もある(コマ収差、歪曲収差、像面湾曲、非点収差、 色収差等。これらを「諸収差」と呼ぶ事も多い) 「写ルンです」のメニスカス型非球面は、1枚だけの レンズなので、諸収差の全て(多く)をバランス良く 低減する事はできない。そこで、銀塩の「写ルンです」 ならではの特徴として、「フィルム面を湾曲させて 装填する」という、トリッキーな手法が取られた。 これで、諸収差の一部(像面湾曲、非点収差等)を 低減する事ができる。 銀塩一眼レフ等では、この手法を用いなかったのは、 一眼レフでは、どんな(交換)レンズを装着するか?は わからない為、特定のレンズの特性に向けた措置は出来ない。 なお、デジタル機でも同様であり、現代の技術では、 撮像センサーを曲げる事はできないから・・ (参考:RICOH GXR(2009年)では、ユニット交換式 という特徴を持つカメラの為、センサーとレンズは 一体型である。この仕様でも、勿論センサーを曲げて 搭載する事は無理だが、特定のレンズに合わせた 光学特性の補正を行っている為、比較的描写力は高い) ・・(銀塩時代のようには出来ないから)本レンズでは、 銀塩の「写ルンです」よりも描写力は低下する。 参考関連記事:本ブログ *【フィルムカメラで撮る】第4回FUJIFILM 写ルンです編 なので、本レンズでは、絞りを追加し、口径比を小さくする 事で低減する諸収差への対応を行っている。 この結果、銀塩の「写ルンです」よりも、本レンズの口径比 (開放F値)は暗い。 それと、本レンズには姉妹レンズが存在する。 「写ルンです」のメニスカス型非球面を、2枚再利用し、 それを対称配置として、超広角化したトイレンズ GIZMON Wtulens 17mm/F16(2018年)である。 こちらのレンズは、大きな周辺減光を伴い、さらに Lo-Fi描写が顕著だ。 いずれにしても、銀塩の「写ルンです」は、どちらかと 言えばHi-Fi(高画質)だが、これらの再利用型レンズは Lo-Fi(低画質)描写を主体とした使い方が望ましい。 --- では、3本目のレンズ。 レンズは、SIGMA ZOOM 28-80mm/F3.5-5.6 MACRO ASPHERICAL (ジャンク購入価格 1,000円) カメラは、NIKON Df (フルサイズ機) 詳細な出自は不明だが、恐らくは1990年代頃のAF標準 ズームであろう。 写りは、正直言って凡庸であり、マニアックさは無いが 近接撮影に強いレンズ(公称1/2倍、実測0.4倍程度) であり、銀塩時代には、そこそこ人気があったレンズ だと思われる。 <複合非球面レンズ> 前述のように、初期(1970年代頃)の非球面搭載型 交換レンズは高額である。 これは部材である非球面レンズそのものが高価だからだ。 初期の非球面レンズの製造には、手作業の工程が含まれる。 研削加工/切削加工、あるいは研磨であり、たとえ機械 (非球面研磨機)を用いたとしても、完全に自動的に 非球面レンズが出来(磨き)上がる訳ではなかった。 これでは大量生産が出来ず、なかなかコストが下がって こない。 前述の「写ルンです」でのプラスチック成型非球面は 大量生産が可能であり、コストが大きく下がったのだが、 さすがにプラスチック(レジン)が素材では、これを 一眼レフ用等の、大型で精密なレンズに使う事は難しい。 そこで、1990年代前後では、「複合非球面」と呼ばれる 技術(又は、「ハイブリッド非球面」や「PG型」とも) が実用化された。 (参考:PGとは、プラスチック(P)+ガラス(G)の意味。 ここもまた、ガラスでは無い素材を、レンズで使って いる事を公にしたく無いケースでの業界用語だ) これは、いったん通常のガラス球面レンズを製造した後、 その上に、プラスチック(レジン)の素材を重ねて、 全体を非球面形状に成型する、という仕組みである。 (注:この製造法は、「なんだか安っぽく感じる」為、 あまりメーカー側からは、この製法での非球面レンズ を搭載しているとは言わないが、それでも非球面 搭載を示す名称や略号がレンズ名には付いている。 1990年代の、普及(安価な)レンズで、非球面搭載 を謳っているものは、ほぼこの製法であろう) これであれば大量生産が効くので、写真用交換レンズの 製法に応用できる。 ただ、やはりプラスチック素材を一部含む事は、精密な レンズには成り難いし、かつ、この製法でも、ある程度 のレンズ生産数が無いと、むしろ割高となってしまう。 そこで、この「複合非球面」は、「廉価版のAF標準ズーム」 等から普及が始まった。本SIGMA28-80mmや、他社製品でも この時代1990年代の(廉価版)AF標準ズームで、この 手法が採用されているものは多い。ASPHERICALや、ALと いった非球面を表す略号が記載されている事もあると思う。 AF標準ズーム等での(複合)非球面の採用は、画質の向上 よりも、むしろコストダウンを主眼にしたものも多い。 つまり、一般的な球面レンズで、諸収差を低減する設計を 行うと、例えば球面レンズが3枚必要だが、複合非球面で 代替すれば、その3枚のレンズが1枚で済んだりする訳だ。 小型軽量化やコストダウンも計れて望ましい。 (参考:同時代のSIGMA社の出願特許での実施例に、 そうした記述がある) こうした「複合非球面」の寿命や経年劣化等については 不明である。まだ製造されて30年程度のレンズも多く、 私の所有範囲では、大きな劣化(例えば、プラスチックが 剥がれてしまう)は無い模様だが、将来的にはわからない。 元々が廉価版のAF標準ズーム等が主流だ、これらは何十年 も長く愛用されるものでもなく、使い捨ての様相であろう。 --- さて、次のレンズ。 レンズは、smc PENTAX-FA 28-70mm/F4 AL (中古購入価格 3,980円)(以下、FA28-70/4) カメラは、PENTAX K-30 (APS-C機) 1990年代のAF小口径開放F値固定型標準ズーム。 上記同様の「複合非球面」の製造技法により作られた 非球面レンズを搭載していると思われる。 型番の「AL」は、Asperical(非球面)の略語だ。 各社が同時期に、同じ技術(複合非球面)を採用できる のは、この手の技術は各カメラ/レンズメーカーが 個別に研究開発するものではなく、場合により各社が 共通で部品を購入手配する「ガラスメーカー」側で 生まれた技術であったりするケースも多いからだ。 同様な例としては、1970年代初頭に、PENTAXが SMC(多層コーティング)技術を搭載したレンズを 発売すると、その後の数年間で、全てのカメラ/レンズ メーカーの交換レンズは多層コーティング化された。 これの理由は、多層コーティングの技術はカメラ/ レンズメーカーのものではなく、その技術や製造設備 を持ってる「ガラスメーカー」から部品(レンズ)を 買ってくるからである。 複合非球面も、同様な出自であろう。 本レンズは、1990年代のPENTAX MZ-3等の中級カメラ にバンドリング(セット販売)されたレンズであり、 廉価版というより、少しだけ本格的な標準ズームだ。 開放F値固定型ズームは、開放F値変動型ズームよりも 用法・技法上の利点は多く、その為、小型軽量で安価で あっても「中級ズーム」と見なす事となる。 後年には、開放F値固定型ズームは、F2.8版が「大三元」 F4版が「小三元」と呼ばれ、高額レンズであるそれらは 近年の初級中級層での「憧れのレンズ」となっていく。 なお、本来の「大三元」等の意味は、「広角、標準、 望遠の、開放F値固定型ズームを3本とも所有する事」 であり、ただ1本のレンズの事だけを指す訳では無い。 職業写真家層等で、どんな被写体を撮るかの依頼内容が 不定(不明)である際、被写体汎用性の高い、高性能な 開放F値固定型ズームは必須であり、その為に3本を初期 投資して「これで、どんな被写体でも撮れるぞ」という 用法だ。 まあだから、アマチュアの初級中級層等では、ある程度 自身が撮りたい被写体ジャンルは決まっている為、 大きく重く高価な「大三元」のコンプリートを行う 必要性は殆ど無い。 また、開放F値固定型ズームの利点や利便性を理解する には、相当なレベルの撮影経験値が必要だ。 例えば、「ズーミングに応じて変化する被写界深度の予測」 や「ズーミングに応じて変化する手ブレ限界速度の予測」 等を容易にする事も、開放F値固定型ズームの利点であるが 初級中級層等では、そこまでの予測経験値を持っていない為 開放F値固定型ズームの利点を活用する事が難しい。 ただ単に「プロも使っているから、良いレンズに違いない、 よし、お金を溜めて、オレも大三元/小三元を買うぞ」 といった購買論理では、殆ど意味が無いので念の為。 <FA28-70/4について> さて、本FA28-70/4における非球面搭載の理由は、 前述のSIGMA 28-80での「コストダウン」と同様の理由の他 ある程度の「画質向上」や「開放F値の固定化」の目的も あったと思われる。 そういう意味では、安価で比較的高性能な本レンズは、 なかなか実用性が高い。 また、極めて特殊な用法だが、本レンズに「リバース・ リングアダプター」を装着して、レンズをマウントに対して 「逆付け」すると、これは、フルサイズ機で使用時には、 約1/2倍~等倍~約2倍、という撮影倍率を持つ 「ズームマクロレンズ」として利用する事ができる。 (注:小型センサー機では、さらに撮影倍率が高まる) 「ズームマクロ」は製品機種数が少なく、希少であるし 高額なものも多い。そして「開放F値変動型」であるケース も殆どであるので、「本FA28-70の逆付け利用」であれば 「開放F値固定型ズームマクロ」が、とても安価に実現 するので、ユーザーメリットが大きい。 (参考関連記事:旧ブログ *特殊レンズ第37回「変則ズーム」編) 非球面を搭載しているか否か?という点を抜きにしても 個人的には、お気に入りのレンズである。 --- では、5本目の非球面搭載レンズ。 レンズは、Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm/F4.5 Aspherical(初期型) (中古購入価格 35,000円)(以下、SWH15/4.5) カメラは、SONY α7 (フルサイズ機) 1999年に発売された、レンジファインダー機用 L39マウント、フルサイズ対応MF超広角レンズ。 (注:フォクトレンダー原語の変母音記載は省略) 近代の超広角あるいは広角レンズで、非球面レンズを 搭載するケースが多いのは、「高描写力化と小型化」の 要因が大きいと思う。特に一眼レフ用の広角レンズは 一般的な球面レンズのみで、それを作ろうとすると 「多群構成」(→レトロフォーカス型や、逆望遠型。 例えば、CONTAXの「Distagon」等が代表的だ) となり、大きく重く高価なレンズとなってしまう。 非球面を用い、ましてや、フランジバック長が短い レンジファインダー機用の広角では、大幅な小型軽量化 が図れ、かつ画質的にも十分である為、製造側でも 利用者側でも、メリットが大きい。 <Voigtlanderについて> COSINA社は本レンズよりも前の時代から、他社(各社)の 銀塩カメラや交換レンズを依頼されて製造する、巨大な 「OEMメーカー」であったが、一般層にはブランド名が 全く知られていなかった為、COSINA単独で自社ブランドの 製品を販売する事は難しかった。 COSINA銘のカメラやレンズが稀に販売されていたとしても 一般消費者層は「何? コシナだと? 聞いた事が無い メーカーだ。三流の安物に違いない」と、商品を見ても スルーしてしまう。そう言った人が首に掛けている、有名 メーカー製のカメラが、実はCOSINA製であったとしても、 そんな事実は、一般層では知りようが無い。 だから、COSINA銘のカメラやレンズは、カメラ店等では 定価の7割引(!)もの新品価格で販売される事が大半だった。 そうすれば「COSINAなど聞いた事が無いが、7割引ならば 買ってみようかな? 安いし・・」となる訳だ。 ちなみに、7割引きの際の定価は「ダミー」である。 定価5万円、売価14800円と値札に書いてあったとしても、 実際には14,800円で売っても十分に利益が出るコスト・ ダウン型の製品であった次第だ。 だけど、いつまでも、そんな売り方を続ける訳には いかない。おりしも、写真の世界では「デジタル化」が 目前に迫っている。デジタル時代に入ったら、もうCOSINA には、銀塩カメラやMFのレンズ等の(各社からの)注文は 入って来なくなってしまう(汗) だから、COSINAは「ブランド銘」を強く欲した。 「ブランド」があれば、同じ工場で、同様な部品を使って 作られたレンズでも、COSINA銘の数倍から十数倍もの 値段で売る事ができる。多くの消費者層は、何も実情が わかっていないから「有名なもの」だけを欲しがるからだ。 そこで、COSINAは、オーストリア発祥で後に独国に移転 したが、休眠中であった老舗ブランド銘「Voigtlander」 (フォクトレンダー、注:原語綴りの変母音は省略) の商標(メーカー名、カメラ名、レンズ名複数)の 使用権を獲得した。 だが、「Voigtlander」自体、日本では、あまり知られて いないブランドだ。 だから、さらに数年後にCOSINAは世界的なビッグネーム の「Carl Zeiss」(カール・ツァイス)銘の使用権を 獲得するのだが、その話は今回は割愛する。 <SWH15/4.5について> 1999年での、本レンズの初出は衝撃的であった。 「Voigtlander」が、イマイチ世間に知られていない為 「もの凄いモノ」を発売して、世間の注目や関心を惹く 必要がある。 そこで、BESSA-L(未所有)という、距離計すら搭載 していない銀塩レンジ機と、本SWH15/4.5のセットを 国産Voigtlander初のカメラとして適価(詳細な定価は もはや不明だが、6万円台程度であった筈だ)で販売した。 「距離計無しの目測式カメラに、見た事が無い程の 超広角のレンズを搭載、しかも安い」 という特徴は、極めてマニアックであり、マニア層 においては「従前の時代での幻のレンズで、1990年代 に京セラCONTAXより復刻された「Hologon 16mm/F8」 を彷彿させる、しかも本SWH15/4.5の方が、開放F値 が明るく、周辺減光も出ず、写りも悪くなく、それで いて、とても安価だ」という理由から、COSINA社での 目論見どおりに、マニア層からの好評価を受けた。 以降の時代、COSINAのVoigtlanderの製品戦略は 「マニア層向け100%」に特化され、マニア層が好む 仕様や出自のレンズ(稀にカメラも)ばかりの販売を 現代に至るまで継続している。 なお、初期のVoigtlander製品は、マニア層にすら あまり知られていなかった為、それに反応したのは 当時の一部の中上級マニア層のみだ。 よって、各レンズの生産・販売数も少なく、中には 1000本以下の販売数のものもある(又は大半だ) 後年、特に「2016年断層」以降のVoigtlander銘の レンズは、極めて高性能(高描写力)となっている ものが殆どだ。これは非球面レンズや異常低分散ガラス レンズを多数用い、現代的なコンピューター光学設計 の新鋭レンズだから(高性能)だ。 しかし、これらは贅沢な部材を使った事で、高額にも なっている。MFレンズだし、手ブレ補正も入っていない から、あくまでマニア層向けである事には変わり無い。 だが、この為、後年には、「Voigtlanderは凄い!」 という新規初級マニア層等の評価が広まってしまい、 とっくに生産完了となってしまって生産数も少なかった 初期Voigtlander製品(レンズ等)を、新規マニア層等が 欲しがり、流通側では「高額相場」として、それらを 「投機対象」としてしまった。 初期Voigtlanderレンズの本SWH15/4.5は、非球面を 1枚採用しているが、異常低分散ガラスレンズは非搭載。 また、一眼レフ用レンズでは、後述のULTRON 40mm/F2 に非球面が搭載された程度であり、他の一眼レフ用 SLレンズ群では、異常低分散ガラスを1枚(稀に2枚) 入れただけのものか、あるいは全て通常レンズによる 構成のものばかりだ。 つまり、初期Voigtlanderレンズでは、近代(2016年 以降)のVoigtlanderレンズほどの高描写力を持たない。 非球面等の技術の内容や光学設計に関する知識が不足 していると「古い時代のものを高価に買わされる」 という状態となるので、十分に注意されたし。 --- では、次のレンズ。 レンズは、Voigtlander ULTRON 40mm/F2 Aspherical SLⅡS (新古購入価格 38,000円) カメラは、OLYMPUS PEN-F(μ4/3機) 2017年に発売された、NIKON Fマウント(Ai~S対応、 電子接点対応)MF準標準レンズ。 本レンズの系譜だが、短期間生産が殆どのCOSINAの SLレンズ群の中では珍しい「ロングセラーレンズ」 であり、SL版(2002年)、SLⅡ版(2008年)、 SLⅡN版(2012年)、SLⅡS版(2017年)となっている。 全機種で光学系は同一だが、本SLⅡS版では、 ヘリコイドの繰り出し量を増やし、25cmまで寄れる 仕様となっている。 この措置は、CANON EF40mm/F2.8 STM(2012年)が 旧来のULTRON 40mm/F2と類似仕様ながら、最短30cmと 寄れる仕様であった為、それに対抗した改良だと思われる。 発売当初から非球面レンズを1枚搭載している。 レンズ構成は5群6枚の変形ダブルガウス型であり、 最後群の1枚が非球面レンズだ。 銀塩時代から完成度が高かったMF小口径(F1.7~F2) 標準(40~55mm)レンズの光学系を小改良したもの だと思われるので、全くの新規のコンピューター光学 設計では無い。(注:全くの新規だと、かつて見た事 が無いほどの、「何々型」(プラナー型やゾナー型等) とも言えない、とても複雑な光学系となっている) ただ、冒頭のNFD50/1.2Lの所でも述べたが、銀塩時代 からのオーソドックスな定番設計(変形ダブルガウス型) に、非球面を1枚追加(または代替)した程度では、 オリジナルのレンズ構成に比べて、極端に高性能になる 訳ではない。 だから、その手の設計手法のレンズに対しては、たとえ 非球面が入っていたとしても、過剰な期待は禁物だ。 しかし「実用的か否か?」と問われるならば、 「非球面や異常低分散ガラスレンズを多用した近代 レンズ程の高描写力は得られないが、それらは 高価すぎるケースもあり、こうした類の、つまり 旧来設計に非球面又は異常低分散ガラスを1枚追加 したタイプの製品でも、実用的には十分であり コスパは優れる」 という結論になると思われる。 なお、非球面を1枚追加する措置が行われた初期の 時代(1970年代~1990年代)の各社のレンズは、 現代では希少品扱いで高額な中古相場になっている ケースが殆どであるが、それらについては「相当に コスパが悪い」と締めくくっておく。 その時代のレンズだと、実用性も低く、それでいて 高額なのだから、もうかなり「困った」ものだ。 ちなみに、まだCOSINA社では、非球面レンズ搭載型 製品に「Asperical」の名称を付与しているのだが、 既に多くの他社では、「近代のレンズでの非球面の 搭載は当たり前」という観点から、もう「Asperical」 という名称や略号を、製品名に付与する事は無い。 なので、初級中級マニア層等が良く言うように、 「Asperical(等)と名前がついているから、凄い/、 偉い/良く写る/価値が高い/高級品だ」などといった 判断や価値観は、もう成り立たないので念の為、 ちなみに、本/旧ブログでのVoigtlanderのレンズの 紹介時でも、「Asperical」の記載を省略する事が 多い。単純に忘れていた(汗)ケースもあるのだが、 COSINA製の近代レンズでは非球面搭載のものは多いし これこそ「現代では当たり前の仕様」であるから、 一々、それを書く必要性や必然性もあまり感じていない 次第だ。 --- さて、次はレンズではなく、カメラを紹介する。 カメラは、CANON IXY DIGITAL L2 (1/2.5型機) (中古購入価格 3,000円) レンズ仕様、39mm(相当)/F2.8 2004年発売のスタイリッシュ・コンパクト・デジタル機。 売時実勢価格約4万円であり、2003年発売のIXY DIGITAL L の後継機である。 型番は、L2ではなく「Lの二乗」の可能性が高いが 記載が面倒なので、以下、「L2」と記す。 搭載レンズは、非球面レンズを1枚を含む4群4枚であるが、 この非球面が「複合非球面」か「ガラスモールド非球面」 (後述)か?は不明である。 小型の撮像素子(センサー)とあいまって、搭載レンズも 非常に小型である、この為、複合非球面とガラスモールド 非球面の両者の可能性があり、まあそこは、どちらであっても 大きく性能等が変わる訳では無いから、どちらでも良い。 少枚数構成レンズながら、描写力は悪く無い。 コンパクト機(銀塩/デジタル)は、ズームレンズ搭載機 が殆ど(90%以上だと思われる)であるが、単焦点レンズ での描写力上の利点は多く、その為、「高級コンパクト」 (銀塩/デジタル)と呼ばれるものの大半(90%以上)は 高描写力の単焦点レンズを搭載している。 したがって、銀塩(35mm判/APS判)時代からデジタル時代に 至る迄、個人的に購入する(した)コンパクト機の大半は、 単焦点レンズ搭載のものを選んでいる。 で、「廉価版コンパクト機での単焦点レンズ搭載機」は 個人的な嗜好性やコスパの観点から非常に好みであり、 そうした仕様の機体の多くを所有している(いた) 特に、銀塩APS機(IX240フィルム使用)では顕著であり 特殊機を除く、ほぼ全ての単焦点機を所有していた事が あった。 CANONが展開していた、銀塩IXY(1996年~)でも同様 であり、通常タイプ(防水等の特殊機では無い)の銀塩 IXYでは唯一の単焦点機であったIXY310(1997年)は 愛用していて現在でも所有している(注:現代での APS(IX240)フィルムの入手や現像は、とても困難だ) 「単焦点IXY」の購入指向の流れにより、デジタル化 されたIXYも、単焦点機IXY Lおよび本機IXY L2は 長期間に渡り現役使用を続けている。 (注:IXY L3以降はズームレンズ搭載機だ) 20年も前の古い機体を現在でも現用している意味は、 これが非球面レンズ搭載の高画質なコンパクト機である 事が主な理由では無い。 IXY LおよびIXY L2の撮像センサー(CCD型である) は、当時の各社の撮像センサーの特性(弱点)と同様に 「短波長側(青色側)の感度が低い」という課題があり その弱点を緩和する為、「青色(B画素)強調補正処理」を 画像エンジン側で行なっている。 この補正処理は、各メーカー(または機種)毎に、その 度合いが異なり、かなり青色強調が強いカメラについては 「オリンパス・ブルー」という、マニア/市場用語に代表 されるような、「青空等の発色が綺麗な」特性となる。 この発色傾向は、後の時代の撮像センサーが、短波長側 でも十分な感度を持つように改良されていくと、 青色補正の必要性が減り、(だいたい2000年代後半には) 失われてしまった。 だから、「オリンパス・ブルー」発色が得られるカメラ は、基本的には2000年代前半頃の機種群に限られる。 本機IXY L2や前機種IXY Lでは、その傾向が顕著であり (注:多少のカメラ設定の変更が必要だ) これは、現代においては希少な特性だ。 なお、この話の注意点は5点ある。 1)オリンパス・ブルー発色は、OLYMPUS E-1、E-300、 E-500の3機種(これらはKODAK製CCD搭載機)のみで 得られる発色傾向では無い(同時代の他社機にも その傾向がある) 2)オリンパス・ブルー発色傾向を持つ機体は、青色 は鮮やかで綺麗だが、青色よりもさらに短波長の 藍色、菫色等の発色は、現物とは似ても似つかぬ 奇妙な発色となる(注:それはそれで、面白い) 3)オリンパス・ブルー傾向は、近代でのOLYMPUS製 μ4/3機でも、基本設定において、若干だが、その 味付けに近い状態となっている。 だが、これはユーザーが容易に変更・調整できる ものであるから「OLYMPUSのμ4/3機を買ったから、 オリンパスブルーが出たよ」という初級層等での 観点や評価は、あまり正しいとは言えない、 4)オリンパス・ブルーの補正は、画像編集(手動)や 画像処理(自動計算)でも可能である。 (参考関連記事:旧ブログ、プログラミングシリーズ 「オリンパスブルー生成ソフトのプログラミング」記事) 5)CANON機では、IXY Lシリーズのみならず、後年 2010年前後のデジタル一眼レフ(例:EOS 7Dや EOS 6D等)においても、「ピクチャースタイル」機能 の画質パラメーターにおいて、ユーザー設定で調整を 行う事で、ほぼ「オリンパス・ブルー」発色傾向を 再現する事ができる。 恐らく、他社機、他機でも、綿密にそういう画質設定を 行えば「オリンパス・ブルー」に近い状態となる。 また、本機IXY L2でも、購入した時のままのデフォルト 設定では、あまりその発色傾向は顕著では無い。 まあつまり「あまり、オリンパス・ブルーを有難がるな」 という話であり、OLYMPUSの古い4/3機を必死で探さず とも、他社機や、その設定、または画像編集で、その 発色傾向を再現する代替手段は、いくらでもある。 --- では、次の「非球面」搭載レンズ。 レンズは、NIKON AF-S NIKKOR 58mm/F1.4 G (中古購入価格 110,000円)(以下、AF-S58/1.4) カメラは、NIKON D500(APS-C機) 2013年発売の高付加価値仕様大口径AF標準レンズ。 ここで「高付加価値」とは、いくつかの意味がある。 まずは「三次元的ハイファイ」という、新たな 設計コンセプト(注:描写特性上での「味付け」の 話であり、そうした名称の部品が搭載されている 訳では無い)のレンズである事。 第二に、少し前述した、1977年発売の幻のレンズ とも言える「NIKON Ai Noct-NIKKOR 58mm/F1.2」 に寄せた(近い)仕様であり、そのレンズが希少価値 から相場高騰している事からの代替レンズとなり得る。 製品仕様が近い事のみならず、Noct-NIKKORは夜景等 点光源で課題となる「コマ収差」の補正を主眼とした レンズ(その為に非球面レンズを入れた)であったが 本AF-S58/1.4も、変形ダブルガウス型構成をベースに 非球面レンズを2枚(注:前玉から非球面)を搭載 した6群9枚構成であり、解像感よりも、ボケ質や その遷移(≒変化の様相、これをNIKONにおいては 「三次元ハイファイ」と呼んでいる模様だ)および コマ収差の低減(注:プラナー型、すなわち原型の ダブルガウス型や、後年の変形ダブルガウス型では その特性上、コマ収差の低減が難しかった)を目指した 設計となっている。 本AF-S58/1.4における非球面レンズの採用は上記の 説明の通りであり、勿論ながら、これは「複合非球面」 ではなく、「ガラスモールド非球面」製法(後述) であろう。 なお、こうした「高付加価値」仕様により、 本レンズの販売価格は21万円+税と高額であり、 かつ、近代の他社高性能標準レンズのように 「開放からシャープで良く写る」といった特性を期待 して、この高額レンズを入手すると、あてが外れて がっかりする羽目になるだろう。 「ボケ質/ボケ遷移やら、コマ収差」という利点は、 初級中級層では理解不能な内容の為、本レンズに ついての市場(ユーザー)評価の大半は、 「クセ玉(癖のあるレンズ)だ。あまり高描写力とは 思えない。使いこなせる人ならば良く写るレンズに なるのかも知れないが、そこは良くわからない」 という評価内容が殆どである。 決してビギナー向けのレンズでは無いので、その点は 十分に注意されたし。 なお、現行レンズではあるのだが、少し入手が難しく なってきている。将来的には、恐らく「投機対象」と なってしまい、希少品としての高額取引となる恐れが ある為、必要とするならば、現行流通時点での入手を。 「難しいレンズだ」と思うならば、もう後年にレア物 になってしまっても、完全に無視するべきであろう。 --- さて、今回ラストのレンズ。 レンズは、SIGMA 50mm/F1.4 DG HSM | Art (中古購入価格 72,000円)(以下、A50/1.4) カメラは、CANON EOS 6D(フルサイズ機) 2014年に発売された高描写力AF標準レンズ。 2014年のART型である為、SIGMAでのエディション ナンバーは、「A014型」となっている。 (注:他社、たとえばTAMRONのように、個別のレンズを 区別する型番では無い。2014年発売のART型は全てA014だ。 ただ、カメラ店で中古品を手にする際、A014とあれば 2014年発売である事が明白なので、時代の判断には良い) 当初、一眼レフ用マウント版での発売であったが、 後年にミラーレス機用マウント(SONY E、Leica L等)版 も追加されている。 SIGMAとしては、2000年代でのEX50/1.4に続く 2本目、かつ完全新設計の標準レンズの発売だが、 その事の歴史的価値よりも、むしろ 「銀塩時代から2010年代に至るまで、標準レンズと 言えば、ずっと定番の6群7枚等の変形ダブルガウス型 構成のレンズの販売が継続されていた。 そんな中、初めて高度なコンピューター光学設計により 異常低分散ガラスや非球面レンズをふんだんに使った 複雑で贅沢な設計(8群13枚)という標準レンズが 新規に発売された」という歴史的価値の方が大きい。 非球面レンズは、当然「ガラスモールド非球面」で あろう。 <ガラスモールド非球面とは> 大口径で精密なレンズを中規模な生産数で作る目的 において、金属製の金型を非球面形状で準備しておき、 そこに高温で溶けたガラスを流し込み、冷やして固める 製法の事。通称、「GM」「GMo」等と呼ばれる。 この手法は近代(早くは1990年代、一般的には 2000年代以降)の、高性能(高額、中規模生産)レンズ の大半で使われた製法だと思われる。 ただし、さらに近年(2020年代以降)においては、 非球面レンズを、特殊硝材(例:異常低分散ガラス) で作りたいという方針もレンズ/ガラスメーカー側に あり、その際、ガラスの融点は、硝材毎により異なり、 特別な高温であったりすると、ガラスモールド製法では 難しい(例:金型が熱変形を起こす、等)事もある。 そんな場合は、50年程、先祖返りして、特殊硝材での 非球面レンズを研削/切削、研磨の工程で製造する ケースも出てきている。 この手法を「研削非球面」(又は「GA」等)と呼ぶ。 <A50/1.4について> 標準レンズとしては、極めて大型であり、典型的な 「三重苦」(大きく、重く、高価な)レンズである。 ただ、ART LINEレンズは、ほぼ全てが同様の三重苦 であるし、後年には他社からも、同様な大型レンズ が増えてきている(理由の大半は、レンズ構成が コンピューター光学設計で、複雑化したからだ。 又、縮退市場である為、高価なレンズを売って利益 を稼がないと、メーカーも流通も苦しいからだ) その為、もはや本A50/1.4程度の大きさ(フィルター 径はφ77mm)や重さ(およそ800g以上、マウントに よりけり)では、あまり驚く事は無い。 例えば、2018年のSIGMA 40mm/F1.4 DG HSM | Art (別途紹介済み)では、 「40mm/F1.4だから、50mm/F1.4より少し小さい?」 と思いきや、12群16枚(異常低分散や非球面を 多数含む)、フィルター径φ82mm、重量1200g以上 という「化け物レンズ」となってしまった。 幸いにしてA40/1.4の描写力は、全所有レンズ中、 トップクラスに高いのだが、この大きさと重さの為、 そう簡単には、外に持ち出し、手持ちでの撮影を行う 事が困難だ。これではさすがに実用性に劣ってしまう。 A40/1.4に比べたら、本A50/1.4は、まだ許せる範囲の 「三重苦」であろう。 ただ、こういった2010年代以降の新鋭標準レンズと 比べると、銀塩時代の標準レンズは、いかに小さく軽い ものか、その恩恵を強く感じる事となると思う。 ともかく、本A50/1.4(や、他のART LINEレンズ群) は、非球面レンズや異常低分散ガラスをふんだんに 採用した、とても近代的なレンズであり、もうこの クラスでは、旧来の時代の交換レンズとは全くの 別物である。 この為、本/旧ブログでは「2016年断層」という用語 を定義し、それ以前の時代のレンズ、それ以降の時代 の高性能レンズとを、明確に区分して評価するケースが 多い。なお、本A50/1.4は、2014年発売ながら、既に 2016年断層に、数年間だけ先行していた、という立場 である。 それと、今回の記事では、本レンズのみ、非球面 レンズに加えて、「異常低分散ガラスレンズ」を 用いている、異常低分散ガラスレンズについては続く 次回記事で詳しく紹介する。 なお、本レンズA50/1.4で使用の特殊硝材は、厳密に 言うと、一般的な「異常低分散ガラス」ではなく、 「FLD」型、つまり「蛍石類似超低分散ガラス」だ。 (まあ、だから、今回記事で紹介している) ---- では、今回の記事はこのあたりまでで。 次回記事は「異常低分散ガラス」編とする。 #
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| 2025-11-08 17:40
| 連載中:レンズマニアックスEX第五部
まず、「レンズグルメ」とは、写真用等の交換 レンズに興味を持つ趣味を示すマニア用語である。 本シリーズは、初級シリーズからの続編で、主に 中級層や初級マニア層等が、レンズについて疑問に 思うだろう事を、実際に私が聞いて来た体験談から まとめ、それらを1人の仮想人格である、 「初級マニアのM君」との架空の質疑応答に集約し、 本シリーズ記事全般を「仮想問答」としている。 ただし、マニアック度が上がるにつれ、過去1度も 他者との話題に上らなかった機材も色々と登場する。 そんな場合には、仮想問答の内容は、創作となる。 今回第2回目は「超広角単焦点レンズ」編として 実焦点距離が21mm以下のフルサイズ対応の 単焦点レンズ(AF/MFは問わず)、および、 APS-C機以下対応レンズの場合は、換算焦点距離 が21mm以下となるレンズを、合わせて10本と、 参考の為に、超広角コンパクト・デジタル機を 1台、計11機種の紹介記事とする。 なお、本来、本/旧ブログでは、同一記事内で 各レンズに同じ母艦(カメラ)を使用した紹介を 行う事を極力避けるルールであるが・・ 本記事では超広角を活用する為に、フルサイズ機 の利用が多く、結果的に母艦被り(重複)が頻繁に 発生しているが、これはまあ、例外的な措置だ。 ---- ではまず、最初の超広角レンズ (レンズの紹介順は、その発売年代等には拘らず 順不同(任意)とする) レンズは、MINOLTA AF 20mm/F2.8 (中古購入価格 36,000円)(以下、AF20/2.8) カメラは、SONY α99(フルサイズ機) 1986年頃に発売されたAF単焦点超広角レンズ。 More #
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| 2025-11-06 16:48
| 連載中:レンズグルメ中級編第一部
本シリーズは架空(空想)の小説形式としている。 主人公である「私」(仮想人格)が、架空の中古カメラ 店で、様々な時代においてカメラを買う時に店長と 行われる、「タイムスリップ的よもやま話」である。 今回は2020年編、その時代に遡ってみる。 ============================================ (↑写真は、2020年初頭撮影) More #
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| 2025-11-03 17:37
| 連載中:【空想中古店】カメラ小僧
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